ポストエディットとは

翻訳業界の中で増加傾向にあるのがポストエディットと呼ばれる仕事です。

今回は、そのポストエディットについてお話したいと思います。

目次

ポストエディットとは

ポストエディットとはMTPE (machine translation post-editing)とも呼ばれるもので、機械翻訳したものを修正して最終的な訳文に仕上げることを言います。ちなみに、ポストエディットをする人のことをポストエディターと呼びます。

ポストエディット案件は、機械が下訳をした状態から作業を始めるため人手翻訳に比べて安く提供されることが多く、企業からのニーズが増えています。

ポストエディットのメリット

単純な文を訳さなくて済む

単純な文は機械が正確に翻訳してくれるので翻訳しなくて済みますし、修正の必要もありません。その分の労力と時間を難解な原文の翻訳に掛けることができます。

定型文を訳さなくて済む

特許明細書には定型文が出てくることが多いです。機械翻訳は、定型文の翻訳には強いのでほぼ修正の必要がない翻訳文を出してくれます。

語彙が豊富

これは機械翻訳の強みで、膨大なデータベースから訳語を見つけてきてくれますし、専門用語にもある程度対応できます。ただ、専門用語に対応する訳語の精度はまだまだ低いため、あくまで「訳語候補のひとつを提案してくれている」という程度に受け止めています。

腕や手が疲れにくい

単純にキーボードを打つ量が減るので、手や腕が疲れにくくなりました。特許明細書はボリュームが大きい案件も多いので、打つ量が減ると疲れにくくなるため、作業量を増やすことができます。

タイプミスが少ない

機械翻訳では人が手打ちする量が減るため、ミスタイプやミススペルが減ります。

ポストエディットのデメリット

文脈を読み取れない

今のところ、機械は文脈が理解できません。そのため一文一文は良くても全体を読んでみると流れに違和感がある、ということがよくあります。

用語の統一ができない

機械翻訳では、同じ単語に対してあらゆる訳語をあてられてしまいます。たとえば、同じ「検出部」に対して、”detection unit”, “detecting unit”, “detecting part”, “detector”, “sensing unit”などと次々異なる訳語にされてしまうことがよくあります。

特許翻訳では基本的に同じ単語には同じ訳語を使用する決まりのため、一つひとつ見つけては修正する必要があります。

CATツール(翻訳支援ツール)を使用すれば、訳語のゆれがないかはチェックできますが、修正する作業自体は発生するため翻訳作業時間が長くなる原因になっています。

同じような文も違う形で訳されてしまう

これも機械翻訳の性質上仕方ないのですが、ほぼ同じ形で一部単語が異なるだけの文が全然違う形で訳されていることがあります。特に特許翻訳では、似たような形の文はなるべくそのまま似たような形の訳文にすることが求められるため、たとえ意味が正しくても修正しなければなりません。

ミスリードされやすい

機械翻訳の精度が上がっているからこその問題ですが、文法的に問題なく読みやすい文が提案されるため、ミスに気づきにくいという特徴があります。最近は日本語でよくある主語や目的語の省略にも対応して補足してくれるので、本当にきれいな翻訳文が出てきます。しかし、補足が間違っていることもよくあるため、それに気づいて修正する必要がありますが、一見すると問題ない文に見えるため内容をしっかり理解していないと見逃してしまいます。

これを防ぐには、機械翻訳は基本的に間違っているはず、と常に疑ってかかることだと思います。そして日本語で省略されている部分は特に丁寧に確認することが大事です。

ポストエディットの単価

機械翻訳が下訳をすることから単価は翻訳単価より下がることが多く、一般的には翻訳単価の50%~80%ほどになるようです。

実際、私も相当下げられました。確かに翻訳の負担が軽くなっているのは事実ですが、デメリットにあるように新たな作業が増えている面もあるので、単価の下げ幅が適切かについては疑問があります。

でも、ポストエディット案件自体がまだ新しいものですし、今後も機械翻訳の精度向上とともに変わっていくものと思います。

まとめ

ポストエディット案件は今後も増え続けていくと考えています。人手翻訳には人手翻訳の良さがあると思いますが、ポストエディット案件を請け負うようになってから、人手にはない機械翻訳の良さにも気づきました。

機械翻訳は翻訳者の敵のようにとらえられることも多いですが、必ずしも敵ではなく、お互いの弱点を補強しあうこともできると思います。翻訳者の大事なことは、クライアントに満足してもらえる翻訳を提供することであり、そのための方法は人手翻訳でもポストエディットでも構わないと思います。クライアントがどの方法を選んでも、満足してもらえる翻訳を提供することが翻訳者の仕事だと考えています。

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