特許翻訳者に必要なスキルとは

仕事を聞かれて「日英翻訳をしている」というと

英語ペラペラなんだね!

とほぼ100%言われます。確かに翻訳するために「英語力(日⇔英翻訳の場合)」は必要ですが、英語力だけでは翻訳はできません。

今回は特許翻訳者に必要なスキルについてお話したいと思います。

目次

特許翻訳者に必要なスキル

語学力

翻訳をするうえで原文の言語と翻訳対象言語に対する語学力は最低限必要な力です。私は日英翻訳者ですので、原文である「日本語」と翻訳対象言語である「英語」の力が求められます。日本語力をどのようにして磨くかは難しいところですが、本をたくさん読んで色々な表現を学ぶことはとても大切だと思います。

英語力の目安としては

  • 英検1級
  • TOEIC 900点以上

ということが一般的に言われていますが、絶対にないとできないというわけではありません。実際、私は英検1級もTOEIC900点も持っていませんが、特許翻訳者になることができました。ただし、翻訳者として英検1級もTOEICで900点も持っていないのはやはりちょっと情けないな…と思うので現在勉強中です。

翻訳者になった時点で上記の英語力がなかったとしても、翻訳者になってから勉強すればよいことです。それに英語の資格は英語力を測る目安にはなっても、実際翻訳をするときにはあまり必要がないものなのであくまで目安として考えていただければ良いと思います。

特許に関する知識

特許翻訳をするのであれば特許に関する知識も必要になります。弁理士の資格を持っているのが理想的ですが、本業は翻訳ですのでそこまでしなくても良いです。ただ、特許取得までの流れ、特許明細書の目的、拒絶理由や拒絶査定などの中間処理を理解している必要があります。

また、日英翻訳はアメリカ出願の場合が大半ですので、アメリカの特許についてもある程度知っている必要があります。私は米国出願用の本やUSPTO(アメリカ特許庁)のMPEP(米国特許審査基準)の出願関連の項目を一通り読みました。

調査力

翻訳をするうえで、語学力と同等に重要なのは調査力です。

特に、特許翻訳では専門用語がたくさん出てきますし、一般的な言葉でもその技術分野で独特な使い方がされていることがよくあります。そういった言葉は一般の辞書に載っていないので調べることになりますが、ただインターネットで検索して出てきた言葉を適当に選ぶ…なんてことは絶対にNGです。たいてい検索するといくつかの候補となる用語が見つかります。いくつか候補を見つけたら、今度はその用語の定義や用例を確認していき一番良いと思われる訳語を選びます。ここにたどり着くまでに、一般の辞書や企業のサイト、論文や特許文献での使用例などあらゆるサイトを確認します。

イメージしづらいときには画像検索を利用することもあります。画像検索は便利で、たとえば科学の法則は画像や動画からイメージをつかむことがよくあります。

こういった調査をするのも特許翻訳の仕事のひとつです。

理系の知識がないとダメ?

翻訳をしたいと考える人は語学が得意な方が多いので、どうしても文系学部出身者が多いと思います。特許翻訳は技術に関する文書であるので理系学部出身でなければならないと思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

もちろん理系学部出身者の方が有利であるとは思います。翻訳会社の中には、募集要項に「理系学部出身であること」を条件に挙げているところもありますが、多くの会社は文系学部出身者も募集していますし、実際私は文系学部出身で特許翻訳者をしています。

理系の知識があることは有利ではありますが、なくても特許翻訳者になれないわけではありません。

どういう人が特許翻訳に向いているか

本を読むのが好きな人

今はインターネットからも信頼性の高い情報が得られますが、体系的に学ぶには本がベストです。特許翻訳の場合は、特許、翻訳、英語表現、テクニカルライティング、技術など勉強することがたくさんあるため、本を読む機会も多いです。そのため、本を読むのが苦にならない人が向いていると思います。

細かい作業が好きな人

翻訳は非常に繊細な作業です。コンマひとつでも重要です。専門用語は訳語を探すのにも苦労することもありますし、その技術独特の言い回しなどもあります。そういったことを一つ一つ調べなければならないので、細かい作業が好きな人に向いているといえます。

まとめ

特許翻訳者に必要なスキルについてお話しました。

翻訳と聞くと「英語力」にばかり注目がいきがちですが、「英語力」は翻訳の一部の側面でしかありません。特許翻訳では「英語力」にプラスして特許や技術の知識が必要になります。

でも、翻訳者になる前にそのスキルをすべて持っている必要はありません。「調査力」や「特許に関する知識」、「技術分野に関する知識」は実務を通しても身についていくものだからです。

焦らず一つひとつ勉強していきましょう。

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