特許翻訳とは

翻訳は「文芸翻訳」と「産業翻訳(実務翻訳)」に分けられ、その「産業翻訳」の分野の一つが「特許翻訳」です。

今回は特許翻訳の仕事内容や特徴についてお話します。

目次

特許とは

特許とは、特許法で定められた権利であり「発明(新しい技術)」に対して一定期間与えられる独占権のことです。

特許権を取得すると、一定期間その発明を独占的に実施できます。ただし、それは条件があり発明の内容を開示しなければなりません。その発明の内容を開示した書類のことを「特許明細書」といいます。

ですが、特許権を取得したとしても、有効なのは出願を行った国内だけになります。つまり日本の特許庁に出願した場合、独占権が有効なのは日本国内のみです。

そのため、もしアメリカで特許を取得したい場合はアメリカに出願する必要があります。

特許翻訳とは

上記で説明したように、外国で特許権を取得したいと思った場合、その国の特許庁へ出願しなければなりません。出願書類は、出願先の国の指定する言語に翻訳することになります。そこで登場するのが「特許翻訳」です。

翻訳する書類の種類

特許翻訳において翻訳する書類の種類は以下の通りです。

特許明細書

特許出願をするときに必要な書類です。特許翻訳者のメインの仕事になります。

拒絶理由通知書などの中間書類

特許権は出願すればすぐ取得できるものではなく、たいてい特許庁から「拒絶理由通知書」と呼ばれるものが発行されます。「拒絶理由通知書」というのは、発明が特許を取る基準を満たしていませんよ、ということが書かれたものです。

たとえば、アメリカの発明者が日本へ出願したとき「拒絶理由通知書」が発行されたとします。「拒絶理由通知書」は日本語で書かれるため、アメリカのクライアントに内容を伝えるために翻訳します。

意見書・補正書

意見書・補正書は拒絶通知に対して反論したり補正したりする応答書面です。

たとえば、日本の発明者がアメリカへ出願してOffice Action(拒絶通知)が発行され、それに対し意見書や補正書で応答する場合、アメリカ特許庁へ提出するために書面を英語に翻訳します。

主にこの3種類の書類を翻訳するのが特許翻訳です。

特許翻訳の特徴

専門性が高い

特許明細書は、法律文書でありながら技術文書でもあります。そのため、特許翻訳者は「特許に関する知識」「技術分野に関する知識」が求められます。

意訳をしない

特許翻訳は直訳が求められます。ただし、直訳=一語一語全てを原文通りに忠実に訳す(=逐語訳)ということではありません。原文と意味の変わらない範囲で語順を変えたり、文を区切ることは基本的に問題ありません。

ただし、どの程度の直訳が求められるかは出願形式やクライアントの要望によっても変わります。クライアントの要望に応えながら、ベストな翻訳文を作成する必要があります。

特許明細書独特の言い回し・決まり

特許明細書は、ある程度決まった型・独特の言い回しというものがあります。これは法律的な側面からどうしてもそうなってしまうのですが、どの明細書も同じように書かれているため、慣れてしまえばそれほど難しくはありません。

まとめ

特許翻訳は、発明を説明する書面(=技術的な側面)と権利を取得するための書面(=法律的な側面)があるため、一般的には難しいと言われています。

私自身特許翻訳を始めてから10年以上経ちますが、まだまだ勉強中ですし法律も技術も変わっていきますので、勉強に終わりはないと思います。

学んだことを仕事に活かし、仕事から新しいことを学ぶ、を繰り返す毎日です。

でも、一つひとつ勉強していけば、難しくてできない、ということはありません。

特許翻訳者を目指す方、一緒にがんばりましょう!

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